漢方薬の副作用

東洋の薬に対する価値観は神農本草経で示されており、以下の分類に従えば西洋薬は『下品』に相当し、西洋医学では『上品』『中品』は薬とされていません。
・東洋における薬の分類
上品 (ideal drug) 作用が例え弱くとも副作用の無い薬
中品 (ordinary drug) 少量または短期間だけなら作用はあっても毒性の無い薬
下品 (drug to be cautious) 病気を治す力は強いがしばしば副作用を伴う薬

そのため、しばしば漢方薬は自然の材料を使用するため副作用が無く、安全であると誤解している人がいます。これは西洋医学と対比してという意味であり、ここ数十年の間に広まったものです。東洋医学では「毒をもって毒を制す」という考えがあります。猛毒を含む天然物は無数に存在し、漢方薬でもそのような原料が用いられています(例えば附子=トリカブト)。また、毒性がないとされるものでも、薬になるものは、使い方次第で「毒」にもなりうることを、肝に銘じておかなければなりません。伝統中国医学では、医療過誤のことを誤治といいます。

ただし、「漢方に副作用がない」というのはある意味で本当のことです。これは薬が天然のものだからという理由でなく、漢方の方法論において副作用という概念がないということです。漢方では副作用が出た場合は誤治、すなわち診断ミスか投薬ミスとみなされます。漢方では、理論上は、副作用があって治癒できるなら副作用なしでも可能であるとされています。このことを理解するには証の概念について詳しく知る必要があります。
西洋医学の視点からは、漢方薬の摂取による副作用として、甘草による偽アルドステロン症や小柴胡湯による間質性肺炎などがよく知られています。

一方、漢方医学には瞑眩(めんげん)という概念があります。治療中に一時的に病状が悪化し、その後に完全に回復するような状態を指します。漢方医学以外の代替療法や民間療法などで「好転反応」という言葉を耳にすることがあると思いますが、ほとんど同じ意味のことです。これは副作用とは異なると説明されますが、実際に症状が出ている時点での区別は困難で、事後的にのみ確認ができます。結局は医師の経験によって見分けるしかなくあまり当てにならないので、瞑眩らしきものがあればただの誤治だったと考えるほうが無難ではあります。この概念は日本独特であり、かつ日本でも江戸時代はあまり認知されていませんでした。また、漢方医学でも古方派の瞑眩を積極的に歓迎する立場は、副作用の考えに近く、特に作用の強力な薬剤として副作用に注意するものには、地黄・麻黄・大黄・附子・芒硝・桃仁が挙げられます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です